設備投資計画

皆さま、こんにちは、そして、こんばんは。

 

中小企業診断士の菅野です。

 

今日のテーマは、「設備投資計画」です。

 

ぜひ、お付き合いください。


設備投資は、事業のために用いる設備に対して行う投資のことです。

 

設備投資は、生産設備の新設、生産能力の拡大、老朽設備の更新・補強、省エネ・省力化、合理化、情報化などのために行うもので、対象には建物や機械設備などの有形固定資産、ソフトウエアや商標権、特許などの無形固定資産の2種類があります。

 

装置産業といわれる業種(製造業や宿泊業等)では特に、計画的な設備投資は必要不可欠となりますよね。

 

また、IT技術の進歩が進み、これからの企業経営には従来以上にIT技術を活用しなければ競争優位を維持できなくなっています。

 

一方で、足元の業況や資金繰り改善等の「守り」を強化すべき時期に、設備投資の採算性計算だけを頼りに大型設備投資を行い、過剰債務を背負ってしまうケースも少なくないような気がします。


参考までに、企業の設備投資はマクロ経済にも影響を与えます。

 

供給面では、工場や設備などの資本ストックを増加させ、経済の生産力を高めます。また、資本装備が増加することで、労働生産性が上昇し、潜在成長率を高めることが出来ます。

 

需要面では、投資額が乗数効果によってより大きな消費となるため、経済の需要を高めます。


さて一方で、資本力に乏しい中小企業が大型設備投資の判断基準とタイミングを誤ると、会社の衰退リスクが飛躍的に高まると言われます。

 

適正な判断基準とタイミングを持たずに闇雲に行った設備投資が、経営の足かせになることも、現実問題として発生しているのではないでしょうか。

 

設備投資、特に多額の資金を要する設備投資は、その判断基準とタイミングが正しくないと失敗リスクが拭えません。

 

ここで、設備投資のリスクを抑えるためのポイントを2つあげてみます。

 

リスクを抑えるために必要な考え方の一つは、「設備投資は自己資金の範囲内で行う」ことです。

 

固定資産への投資は長期にわたって資金を固定化させるため、できるだけ返済義務のない自己資本でまかなわれることが望ましく、実際に「固定比率(固定資産÷自己資本)を100%以下に抑える」ことを判断基準として、リスク管理をされている方もいます。

 

しかしながら、中小企業の資金調達の現状を考えた時、実際に自己資本だけでまかなうことは困難かもしれません。

 

そこで、自己資本のほかに長期借入金など返済期限の長い固定負債を加えた長期の安全資金でまかなう、つまり、「固定長期適合率(固定資産÷(自己資本+固定負債))を100%以下に抑える」よう管理することが大切になります。

 

返済期限の短い短期借入金などの流動負債まで投入することは資金繰りをきわめて困難にし、非常に危険であるため避けなければなりません。


■参考【固定比率100%以下の例】     【固定長期適合率100%以下の例】


リスクを抑えるために必要な考え方のもうひとつは、「設備投資は減価償却費の範囲内で行う」というものです。

 

減価償却費の範囲内で設備投資をしていれば、資金負担が増えず、多額の借入金に依存する企業体質にはならないものです。

 

しかしながら、新しい設備を導入することで得られる利益や有利な融資制度に気をとられ、減価償却までは目がいかないといったケースも少なくないのではないでしょうか。

 

その結果、例えば、機械を導入したものの当初見込んだ収益性・生産性が上がらない→単年度利益をあげるため減価償却を控える→殆ど使われない機械が含み損を抱えた資産としてBS左側に残る→機械購入に充てた長期借入金がBS右側に残る、といったケースが発生します。

 

稼がない機械を抱えてなおかつ借金があれば、資本利益率を圧迫し、固定比率も適正値を超えます。

また、長期借入金の返済が残っていますから、当然キャッシュフローも悪化します。


では、設備投資計画を立案する際、具体的にどうすればよいのでしょう。

 

まず、今後5年間の減価償却費総額を算出します。A社の例をみてみましょう。

【A社の例】


 

計画0年目(進行期)におけるA社の既存設備の減価償却費予算は、1年後(計画1年目)10M(M=百万円)、2年後9M、3年後8M、4年後7M、5年後6Mで、5年間の合計額は40Mとなります。

 

つまり、40百万円が、新たな投資をしなくても、今後5年間で発生するA社の減価償却費となります。

 

次に、投資可能な金額を把握した上で、今後5年後の目標付加価値を達成するために、どんな設備が必要かについて検討します。

 

ここで、設備投資額を間違えないためには、投資資金回収期間計算(投資回収期間は法定耐用年数の半分以下、法定耐用年数まで使用できない資産はリースにする等、自社のルールを決めておく)、労働生産性計算(労働生産性を設備の面から検討するには設備生産性がどれだけ向上するかを計算する)、適正価格(3社見積りをとり付加価値をどれだけあげられるかを比較検討する)等を行う必要があります。

 

その上で、各年度の投資科目と金額を決めていく訳ですが、ここで確認するのは、投資総額が減価償却の範囲内に収まるかどうかです。

 

例えば、上記の例でA社が1年後に20Mの設備投資を計画する場合、計画1年目の期の真ん中で取得したとすれば1年後の減価償却費が3M増加することになります(償却率25%の場合)。

 

そうしますと、2年後の減価償却費は9M+4M+3Mで合計16Mとなります。

そして、3年後、4年後、5年後と計算していくと、5年間の減価償却費合計は82Mとなり、新規投資額80Mは、減価償却費82Mの範囲内に収まっていることがわかります。


【新規設備投資計画は、減価償却費の範囲で】


さらに、設備投資計画を実行することで「設備生産性」にどのような影響を与えるか確認します。

既存設備+新規設備で、毎年どれだけの付加価値を生み出せるか・・・ポイントは、付加価値が年々上がるような投資の仕方を考えることになります。

 

一方で、労働生産性に影響を与える「労働装備高」は、増やしすぎると固定比率に影響するなどリスクが高くなるケースが想定されますので、横ばいあるいは微減で推移するよう設計するのがポイントです。


今日はここまでとさせていただきます。

 

最後までお読み下さり、ありがとうございました。