皆さま、こんにちは、そして、こんばんは。
中小企業診断士の菅野です。
今回のテーマは、「労働観と働き方改革」です。
よろしければ、このことについて、ご一緒に考えていきたいと思います。
ぜひ、お付き合いください。
2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行され、現在、働き方改革は、大企業だけでなく中小企業にとっても重要な経営課題のひとつとなっていますね。
また、新型コロナウイルスの影響により、これまでの働き方が大きく見直されているタイミングでもあります。
さて、 ここで質問です。
「あなたは、何のために働いていますか?」
と問われたら、何と答えるでしょうか。
2014年に行われた「国民生活に関する世論調査(内閣府)」によると、「お金を得るために働く」と答えた方の割合が51.0%,「社会の一員として,務めを果たすために働く」と答えた方の割合が14.7%,「自分の才能や能力を発揮するために働く」と答えた方の割合が8.8%,「生きがいをみつけるために働く」と答えた方の割合が21.3%となっていました。
また、リ・カレント株式会社が2020年度の新入社員を中心に実施した「2020年度最新若手意識調査」では、働く理由を明確に「持たない」が9割、職場で「喜ばれたい」「認められたい」貢献・承認欲求が7割超え、という調査結果が出ていました。
自分は何のために働くのか・・・その理由を明確に持たない若手社員が少なくない一方で、仕事に楽しさや喜び、やりがいを見出したい、あるいは働くことを通じて価値観や自分らしさを追求したいと思っている人も少なくないのではないかと思います。
ここで、労働観の歴史について、少しだけ触れておきたいと思います。
東京大学 社会科学研究所 水町勇一郎教授が執筆したコラム「働くことは苦しみか、喜びか。労働観の歴史的変化を読み解く」によると、欧米では、働くことの価値や意識が宗教の発展とともに変化したこと、とりわけカトリックとプロテスタントで大きく変わったことが分かります。
また、欧米の労働観が宗教と密接に関係しているのに対して、日本の労働観の根底にあるのは、過去から続く「家」の理念であり、「村」社会や「家」社会のしがらみが色濃く反映されていることもわかります。
水町氏は、戦後の高度経済成長期には、企業共同体が家族的な存在になり、企業のために働くことがエトスとなり高度経済成長をもたらしたとしています。
しかしながら、何のために働くか、自分は何を大事にしたいと思っているのかということを考えないまま、企業という組織に絡め取られてしまっている、そしてそのまま1990年代のグローバル競争に突入してしまったことが、いまの日本の労働環境を息苦しくしている1つの要因と続けています。
さらに、自分は何のために働いているのかという価値観を意識できないまま、企業の論理で働かされ続けた結果が、ワークライフバランスの欠如、メンタルヘルスの不調、さらには過労死や過労自殺を生んでいる・・・こうした日本の労働環境は健全ではないし、抜本的に変える必要があるということで、いま取り組みが進められているのが働き方改革と続けています。
さて、ウィズコロナ・アフターコロナの時代、働き方はどのように変化するのでしょうか。
仕事に楽しさや喜び、やりがいを見出したい、あるいは働くことを通じて価値観や自分らしさを追求したいという思う人は少なくないと思います。
なので、働き方改革を進めるためには、先行企業が具体的に何をしているかも大事ですが、その前に、どのような考え方・価値感を持って働き方改革を進めているかという点を見逃さないことが大切かもしれません。
「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰(厚生労働省)」事例集や、ワークライフバランスの取り組みを行う企業の事例をみると、働き方を改善することで、労働生産性の向上(付加価値向上と効率化)が図られていることがわかります。
その背景に、従業員の物心両面の満足感があることは想像に難くありません。
正社員を中心とした過重労働と、非正規を中心とした雇用環境の悪化、両者の格差がいびつな形で起こり、全体としてのシステムが持続可能にならない状況に陥っているのが現状です。
これを改めようというのが働き方改革です。
長時間労働や正規・非正規の格差を是正し、日本の雇用システムのバランスを取り直そうということで取り組みが進められています。
現在、「働き方改革」を進めるための、法改正が順次始まっています。
コンプライアンスの徹底のため、「社内ルールの設定・運用徹底、労働時間の見える化」は既に実施しているという企業も多いと思います。
さらに、生産性を高めるための「既存業務の効率化」についても既に着手しており、徐々に成果が出始めているという企業も少なくないと思います。
加えて、既存業務の効率化によって生み出された時間・付加価値を活用して成長・変革を図り、新たなイノベーションを生み出すことを想定している企業もあると思います。
いずれにしても、従業員がどんな労働観を持って仕事に取り組んでいるかは大切だと思います。
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の中小企業庁長官賞を受賞した伊那食品工業 株式会社は、年商197億700万円(2019年実績)、従業員数566名(2020年12月:パート・シニア含む) の非上場企業です。
HPには、16名の社員が、キャリア、現在の業務、今後の目標などを語るページがあります。
仕事にやりがいをもって取り組んでいるんだなと感じます。
また、トップメッセージには、次のメッセージがあります。
「・・・まずは社員が幸せを感じることができ、みんなで一緒につくり上げていくことが、もっとも重要だと考えています。だからこそ、社員全員が仲間であり、家族、ファミリーとして同じように歩み、努力していきたいと思っています。・・・能力云々ではなく、家族だからこそ、お互いに気遣い、助け合える、そこに価値があると思える人にこそ、集まっていただき、「いい家族、いい会社」をつくっていきたい、そう願っています。」
これらを読んで、社員の「やりがい」の根底には、「幸福感」があるんだろうなと感じました。
一方で「多様性」をどう考えるかなど、働き方改革を進める過程で、新たな課題が出てくるかもしれませんね。
今日はここまでとさせていただきます。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。