現場の「管理と改善」

皆さま、こんにちは、そして、こんばんは。

中小企業診断士の菅野です。

 

今日のテーマは、「現場の『管理と改善』」です。

 

ぜひ、お付き合いください。


かなり前のことですが、ある会合で、製造業A社の社長からこんな悩みを聞きました。

 

それは、3年前に売上の6割を占める大口取引先が生産拠点を海外に移したため、大幅に受注が減少したというものです。新規開拓に奔走した結果、幸いにも、従来業務(A)の減少を補完できる仕事(B)を見つけることはできましたが、この仕事は過去に経験したことはあるものの、これまで培ってきた技術を活かすことが困難でした。

 

結果として、新規取引先より、品質・納期のクレームが押し寄せました。全品検査を余儀なくされ、検査工程の人員を補強するとともに、不良品の修正業務が増えたことで人件費負担が増加しました。また、廃棄ロスが増加したことで材料費負担が重く圧し掛かり、付加価値を生み出すことができません。これまでの管理の仕方では対応できない事象が次々と発生しました。※ちなみにA社は社員平均年齢30代で熟練工は全体の2割程度でした。

 

 

その後A社は、計画策定の専門コンサルタントと業界に特化したプロコンサルタントを活用し、経営改善計画を策定(自社の強みを活かせる従来業務(A)の新規開拓に集中+現場改善を進める)し、現場改善の専門家の指導による「カイゼン」を進めることで、何とか窮境を脱することができました。



さて、製造業の現場では「現場の管理」と「現場の改善」の2つを考える必要があります。

 

現場の管理とは、予め決めた計画に従って、品質・生産量・納期・コストを【目標通り達成】することです。一方で、現場の改善とは、品質・生産量・納期・コストや現場のモラル・安全を【進化・向上】させていくことが必要になります。

 

管理を「現状維持」と考えると、改善は「現状打破」ということができるでしょう。事業を営む上で「管理」と「改善」は、車の両輪のごとくお互いに繰り返されて現場は向上していくものですが、中には、管理偏重、改善不在、あるいは非効率な管理・改善というケースも少なくありません。

 

また、有効な施策を打つためには、事実をしっかりつかまえて判断し行動する必要があるのですが、事実を掴むためのデータが不足している場合があります。このため、問題点を掴むための情報を得られないケースが出てきます。



さて、前述したとおりA社では、計画策定専門コンサルタント、業界に精通した現場改善コンサルタントを招聘し、事業構造の変化に対応した「計画策定」と「現場改善」を推進しました。

 

まずは現状を把握するための財務・事業調査です。改善対象部門のリーダー・メンバーの協力を得ながら、現場改善テーマに沿って工程や作業の実態把握を進め、発生しているムダやロスを把握しました。

 

その上で、ロスの集約、改善項目の整理、改善目標値の設定を行いました。ロスを排除するには、ロスが発生している真の問題点を見つけなければなりません。A社の問題点は、加工方法や日程計画などの管理、設計手順・やり方などに問題があり、現有・既存の戦力を活かしきれていないことでした。このため、品質管理、平準化生産、段取り時間の短縮、標準作業、設備管理等それぞれについて課題を抽出し、具体的なアクションプランを策定しました。

 

計画策定後は、現場改善コンサルタントが月1回ペースで現場に入り、改善活動の推進と進捗管理を実施しました。彼は「機械を入れれば生産性が上がる」という社長の言葉に対し、「今ある人員と設備で改善しなければ生産性は上がらない」ことを伝えました。結果、コンサルタント支援から1年後、現場改善の成果が見え始め、翌年から業績が改善し始めました。また、既存取引先からの評価も上がり、新規取引のオファーを受けるケースも増え始めました。



会社が儲かるためには、お客様へ良い部品(製品)を提供することが必要です。そのために現場でやるべきは、良い品質のものを、より安く、より短い工期でつくることです。改善とは、最新の機械を導入することだけではなく、自分たちの現場を見つめ、そこにムダを発見し、そのムダを取り去る一連の活動であり、あくまでも原価低減を図ることです。

 

原価を構成する要素は、どこの会社でも同じようにかかる費用と、作り方によって異なる費用があります。原価削減は、後者の費用(ムダな費用)を少なくすることです。例えば、作りすぎ、手持ち、運搬、加工そのもの、在庫・仕掛に加え、動作のムダ、不良をつくるムダなどがあげられます。原価を削減するには、これらのムダの徹底排除を行うことが大切になります。


話しは変わりますが、会社が儲からなくなる前には前兆があります。そして、これまで見逃していた小さな問題が、積もり積もって大きな問題となり、経営を圧迫することもあります。また、突発的な出来事を契機にこれまでのやり方が通じないことに気づかされたりします。いずれにしても「成行管理」ほど怖いものはありません。

 

以前のコラムで紹介した一倉定氏は、「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも社長の責任だ」「いい会社とか悪い会社とかはない。あるのは、いい社長と悪い社長である」という厳しい言葉を投げかけています。

 

組織のトップはそのくらい厳しい環境に身を置いているということだと思いますが、そうは言っても人間ですから、わからないことはわからないものです。なので、客観的な目で問題を把握し、課題を設定して解決を図るという外部の協力は欠かせません。

 

今日はここまでとさせていただきます。

 

最後までお読み下さり、ありがとうございました。