「もっと売上を上げないと」「この案件だけは失いたくない」「他人の評価が気になって仕方がない」──
ビジネスの現場では、プレッシャーと緊張感の連続です。
日々、ビジネスをしていると、何かと「手放せない」ものが増えていきます。
- 目標達成への強いこだわり
- 取引先との関係性
- 売上や数字
- 自分への評価やプライド
これらはすべて、ビジネスにおいて重要なことですが、必要以上に執着してしまうと、知らず知らずのうちに心が疲弊し、選択の幅を狭めてしまうことがあります。
今回は、世界で最も多くの人に読み継がれてきた書物・聖書の中から、「執着を手放す」ことについての視点を取り上げ、現代のビジネスにも役立つヒントを探っていきます。
「握りしめるほど、不安になる」──執着の正体とは?
誰しも、努力して築いてきたものには思い入れがあります。
しかし、その「守らなければ」「失ってはいけない」という思いが強くなると、次のような状況が起こります。
- 失敗が極端に怖くなる
- 過去の実績にしがみつく
- 他者や環境に対するコントロール欲求が高まる
これは「執着」がもたらす心の動きです。
一方で、「必要ならまた築ける」「変化しても自分は価値がある」と思えると、より柔軟で前向きな選択ができるようになります。
聖書にある「手放すこと」に関する3つの示唆
宗教的に捉えるのではなく、聖書を人類の知恵の書として読み解くことで、私たちの生き方や働き方に活かせる視点が得られます。
1. 「手放しても、必要なものは与えられる」
「何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて加えて与えられる。」
— マタイの福音書 6章33節
この言葉は、「自分の外側にある価値観(数字・結果)ばかりにとらわれず、まず“何が正しいか”を軸にしよう」というメッセージにも読み取れます。
短期的な成果に執着するのではなく、「自分のビジネスが社会にどんな価値を届けているのか?」という視点で行動することで、結果として必要なものは巡ってくる、という考え方です。
2. 「思い煩いは手放してよい」
「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。」— ペテロの手紙 第一 5章7節
ビジネスの世界では、「不安」や「心配」はつきものです。
この言葉は、それを一人で抱え続けるのではなく、信頼できる誰かや、自然や社会の流れに任せてみることも選択肢に入れてよいという提案のようにも受け取れます。
特に個人事業主や中小企業の経営者は「すべて自分で何とかしなければ」と思いがちですが、視野を広げ、助けを求めることで道が開けることもあります。
3. 「本当のよりどころを見極める」
「富に頼らず、生ける神に望みを置くように命じなさい。」— テモテへの手紙 第一 6章17節
ここで言う「富」は、単にお金だけではなく、「肩書き」「地位」「成功」など、現代社会における“力”の象徴と読み換えることができます。
それらを完全に否定するのではなく、それがすべてではないという視点を持つことで、心が軽くなります。
何かを失っても、自分の価値が揺らがないという土台があれば、どんな変化も恐れず進めるようになります。
執着を手放す3つのヒント(実践編)
「言うは易し、行うは難し」です。
でも、小さな一歩からなら始められます。
1. 今、自分が最も「握りしめているもの」は何か書き出す
「売上」「クライアントの期待」「過去の成功体験」など、手放したいと感じているものを紙に書き出すことで、俯瞰して見られるようになります。
2. それを失っても、自分の価値は変わらないか?と問いかける
あくまで“問いかけ”です。
答えが出なくても大丈夫。大切なのは、心の軸を少しずらしてみることです。
3. 毎日1つ、手放す「こだわり」を選んでみる
たとえば「今日1日は、成果よりも“誠実さ”を大切にする」など、自分なりのチャレンジテーマを設定してみましょう。
結びに:執着を手放すことで広がる「選択の自由」
ビジネスも人生も、「うまくいかせたい」と思うほど、力が入り、視野が狭くなってしまうことがあります。
でも、一度、深呼吸して「手放す」ことを意識してみると、不思議と新しいアイデアや人とのつながりが生まれることがあります。
今回ご紹介した聖書の言葉は、決して宗教的な押しつけではなく、よりよく生きるための“視点”や“知恵”のひとつとして参考になるものです。
もしあなたが今、何かにしがみつきすぎていると感じているなら──
その“手放す瞬間”こそが、新しい流れの始まりかもしれません。