経営者の孤独と疲労、そして生き方の探求


はじめに:経営者の「見えない疲労」・・・

 

経営者は慢性的な疲労に陥っていることが少なくないと思います。

しかし、その疲れは周囲に見せることができない。会社の舵を握る立場として、「弱音を吐けない」「逃げられない」——そんな重責の中で、日々心と体をすり減らしている。

 

本記事では、経営者が直面する「目に見えない疲労」や「心の孤独」、そして意味と目的を求める生き方の光と影について掘り下げる。実際の事例も交えながら、「経営」と「人生」の交差点に立つすべての人に向けて、考える材料を提供したいと思います。


鎧を脱げない人生:経営者の心の構造・・・経営者に必要な「鎧」と、その代償。

 

経営とは、無数の判断と責任の連続です。組織を守るため、従業員の生活を守るため、経営者は「心に鎧をまとう」必要があることも少なくないと思います。

  • 誰にも弱音を吐けない:リーダーが不安を見せれば、組織は不安定になる。
  • 信頼される必要がある:人を率いるには、揺るぎない姿勢が求められる。
  • 孤独との向き合い方が問われる:経営判断は基本的に「一人」で下すしかない。

この鎧は、経営者としての役割を果たすためには必要不可欠な一方で、心の自由を奪い、慢性疲労を生み出す原因にもなっています。


「安らぎ」さえも演出しなければならない現実

 

たとえプライベートでリラックスする場を得たとしても、「経営者」という肩書は簡単には外せません。

  • 家族といても、どこか“経営者”のまま
  • 経営者同士の交流の場でも、競争と警戒がつきまとう
  • 一人になったときでさえ、頭の中は業務や数字に支配される

このような状況では、「真の意味での安らぎ」は得られにくく、慢性疲労は蓄積されていきます。


意味を追い求める生き方——ある経営者の選択

 

【事例紹介】意味を求めて会社を縮小した経営者

 

某県で教育系ベンチャーを立ち上げたA氏は、事業が成長する中で次第に心身を消耗し、「何のために働いているのか」がわからなくなったといいます。

  • 「売上は右肩上がり。でも、家族との時間も、自分の心も失っていった。」

A氏は、会社の規模をあえて縮小し、自分が直接関われる範囲にフォーカスしました。その結果、

  • 従業員との信頼関係が深まり
  • 自分のペースで仕事ができるようになり
  • 家族との関係も回復した

「意味」を追求したことで、収益性だけでは得られなかった人生の充実感を得られたそうです。


しかし、「意味」の追求には代償もあります。

意味を求める生き方は崇高であり、多くの経営者が惹かれる道だと思います。

しかし、その過程で次第に疎遠になるものが出てくるのも事実ではないでしょうか。

 

家族との距離——無言の摩擦

 

目的に向かって全力を注ぐがゆえに、家族との対話が減る、価値観の共有が難しくなる、といった問題が生じやすいかもしれません。

  • 経営視点で家庭を見るようになる
  • 「分かってくれない」と感じることが増える
  • 孤独を抱えながら、それを言えない

家族すら「経営者としての自分」を理解できないこともあり、それは大きな心の乖離を生むこともあるでしょう。


高齢の経営者が抱える「次の不安」

 

年齢を重ねた経営者には、「事業承継」「老後」「社会的役割の変化」といった新たな悩みが訪れます。

  • 引退後、何をして生きていくのか?
  • 自分がいなくなったら、会社はどうなるのか?
  • 社会との接点がなくなったとき、孤独に耐えられるか?

こうした不安に対して、迎合的な選択をしてしまうと、かえって自分の生き方を見失うリスクがあります。妥協や迎合は、心の腐食につながることもあるからです。


「人間の生き方とは何か」

 

「人間の生き方とは何か」という問いは、哲学、宗教、心理学、文学など、さまざまな分野で長年にわたり論じられてきた非常に深いテーマです。

 

決まった答えはなく、人それぞれの価値観や経験によって異なりますが、いくつかの視点から整理してみましょう。

 

1. 目的と意味を追求する生き方

多くの哲学者や宗教家は、「人生の意味」を探求することが人間の本質だと説きます。

例:ヴィクトール・フランクルは、極限状況の中でも「人生に意味を見出すこと」が生きる力になると述べました(『夜と霧』)。

 

2. 他者とのつながりの中で生きる

人間は社会的動物であり、孤立ではなく「関係性」の中で自己を形成します。

家族、友人、仕事仲間、地域社会との関係が、自分の在り方や生きる理由を深めてくれます。

 

3. 自己実現を目指す生き方

心理学者マズローは、人間の最終的な欲求として「自己実現」を位置づけました。

自分の能力や価値を最大限に発揮し、納得できる人生を送ることが理想とされます。

 

4. 苦しみや困難との向き合い方

人生は常に順風満帆ではなく、病気、別れ、挫折などが避けられません。

それらにどう向き合い、乗り越えていくかによって、人間の生き方が問われます。

仏教では「苦」を前提とし、それを受け入れた上で心の在り方を整えることが説かれています。

 

5. 日常の中に価値を見出す生き方

大きな目標や成功だけでなく、日々の営み(仕事、食事、会話)の中に喜びや意味を見出すことも大切です。

小さな幸せを感じ取れる感受性こそが、豊かな生き方につながるともいえます。


おわりに・・・日常の中に価値を見出す生き方に着目

 

私見ではありますが、前述の「5. 日常の中に価値を見出す生き方」に生き方のヒントがあるような気がします。

 

日々の営み(仕事、食事、会話)の中に喜びや意味を見出せるということは、「良い心の状態」にあると考えられるでしょう。

 

そしてそれは、日常の中で「大いなる存在」を感じる瞬間を持つことなのかもしれません。

自然の風、食事、人との会話、喜びや悲しみ・・・日々の中に「大いなる存在」の「声」や「愛」を感じる瞬間は意外とあります。

 

例えば、

  • 風が肌をなでる瞬間に、見えないけれど確かな「何か」の存在を感じる
  • 美味しい食事をいただくときに命の循環と恵みを実感する
  • 誰かと心から笑い合うときに、無条件の愛のかけらを味わう
  • 悲しみや痛みを感じるときに、寄り添い支えてくれる存在の温かさを知る

これらはすべて、「大いなる存在」が私たちと「つながっている証」なのかもしれません。

 

世知辛い情報が錯綜する現在社会で、このようなインプットがないと、孤独感や慢性疲労から抜け出せないことにもつながりかねません。

 

意識して、大いなる存在の「愛」を感じる瞬間を、つくっていきましょう。

 

今日はここまでとさせていただきます。最後までお読みくださり、ありがとうございました。